12月28日ブログ補足2

12月28日の、平成23年度税制改正に関するブログ内容の補足(その2)として、
今回は、外国税額控除における当初申告要件撤廃について述べます。

外国税額控除は、納付が確定した外国税額について、確定申告書に添付された明細書に控除限度額の記載があるものに限り、適用を受けることができます。
したがって、現行法では、例えば、下記1.2.のような場合、外国税額控除において納税者は不利な取り扱いを甘受せざるを得ませんでした。

1.平成21年度確定申告において、
控除限度額(=国内所得×国外所得総額/全世界所得総額)を過少に記載していた
ため、適用を受けた外国税額控除額が過少であった場合(この年度において、「『国外所得に対する外国所得税額』>提出した申告書記載の『控除限度額』」であることを前提)

2.平成20年度の国外所得に対する納税(申告納税)を平成21年度に行ったため、
平成21年度確定申告において外国税額控除の明細を添付し、外国税額控除を行おうとしたが、平成20年度確定申告において、外国税額控除に関する明細書を添付しなかったため、平成21年度確定申告において、外国税額控除が行えないことが判明した場合

2.の状況についてさらに具体的に補足しますと、居住者が平成20年中に国外で獲得した所得について、国外での納税も完了せず、また平成20年度の国外での所得税計算も完了しなかったため、(日本国での)平成20年度確定申告について、外国税額控除に関する明細書を添付しなかった場合がそれに当ります。
この場合、たとえ、国外所得に対する国外での納税または申告が、完了していなかったとしても、平成20年度確定申告において、
控除限度額(=国内所得×国外所得総額/全世界所得総額)を外国税額控除に関する明細書に記載しない限り、平成21年度において、外国税額控除を行うことはできません(平成20年度に明細書を添付し、控除限度額を記載していれば控除限度額は3年間、繰り越されますので平成21年度に外国税額控除を受けることができます。また、勿論、平成20年度に、頑張って外国所得に対する税額を計算し、当初より平成20年度確定申告書において、控除限度額とこれに対応する外国所得税額を記載し外国税額控除を受けた場合、外国税額控除が認められるのは当然の前提です)。

所得税法95条6項の宥恕規定の範囲は、判例・裁決等では、非常に狭く解されていますので、更正の請求や嘆願によっても、このような場合に外国税額控除の適用を受けることは、ほぼ不可能に近いとされていたものでありました。
国税不服審判所の裁決事例で示しますと、
裁決番号「平140117」、「平170003」、「平190116」
等が上記で、納税者が泣き寝入りせざるを得なった事例に当ります。

上記1.2.は、所得税を前提に述べましたが、法人税における外国法人税額控除においても、取扱いはほぼ同様です。

上記1.2.は、私ども朝日新和税理士法人内では、周知及び注意喚起を行っていますので、これらのようなミスはありませんでしたが、非常に際どかった例として、下記3.が挙げられます。

3.海外支店で勤務している社員(居住者を前提)について平成20年度の国外勤務の対価としての給与に対して、会社が納期の特例(20年7-12月分)による源泉所得税の納付を平成21年に当該勤務国で行い、(日本での)平成20年度確定申告において2.で述べた明細書を添付し、納期の特例分(20年7-12月分)に対応する所得を含めて控除限度額を記載し、翌平成21年度確定申告において、納期の特例分(20年7-12月分)税額を含めて外国所得税額を記載し、外国税額控除を受けようとした場合。

この事例において、平成20年度確定申告において2.で述べた明細書を添付し控除限度額を記載しているので、翌平成21年度確定申告において、平成20年度から繰り越された控除限度額の範囲内で、外国税額控除を受けることができるように思えるかもしれませんが、源泉所得税においても「納付が確定した年度」とは平成20年度となりますので、平成21年度確定申告では、納期の特例分(20年7-12月分)税額については、外国税額控除を受けることはできず、平成20年度確定申告で納期の特例分(20年7-12月分)税額を記載し、外国税額控除をすべきだったことになります。

ここで、申告所得税の場合と同じく、所得税基本通達95-3により、(継続して)実際に納付した日の属する年分(この事例では平成21年度)の確定申告書で外国所得税額を記載し申告している場合は、納付した平成21年度において外国税額控除が認められるのではないか、との疑問が生じるかもしれませんが、所得税基本通達95-3は源泉所得税については適用がありません(正確にいうと適用がないのではなく、源泉所得税においては、「この通達でいうところの納付した日=給与から源泉された日」であります。明文の規定はありませんが、大阪国税局等に確認済)。よって、納期の特例分(20年7-12月分)税額については、平成20年度の当初確定申告で外国税額控除を受けるしか、方法はありません。

そして、平成21年度確定申告提出後にそれに気付いた時には(現行法での更正の請求の期限である1年を過ぎていますので)、納期の特例分(20年7-12月分)税額について、外国税額控除は受けることができないという結果になります。

したがって、現行法においては、3.の場合でも(納税者が源泉徴収をされていることを知りえなかった等、相当の理由がない限り)、泣き寝入りをしなければならないことになります。
実際、私どもの事務所でも、昨年、阪神間の某税務署より、3.の指摘を受け、冷や汗を流しましたが、上記、括弧内の相当の理由の存在により、事なきを得たことがありました。

平成23年度税制改正法案が成立すれば、納税者にとって上記1.〜3.のような不利益は解消されることになります。

私どもの事務所では、外国税額控除の適用を受けるための(居住者の)所得税確定申告を年間60〜70件ほど行っていますので、税務署や市町村から、(大半が還付申告のため)ほぼ毎月のように外国税額控除に関して問い合わせや確認の電話が掛かってくるのですが平成23年度税制改正により、電話を受けた時の不安や緊張も大幅に軽減されることになりそうです。

この点においては〈おいてだけ?)非常に意義のある税制改正案であることは
有國が、12月28日に述べたところと同じであります。

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